坊津から桜島にある海軍特攻基地へと異動する主人公の下士官。枕崎、谷山、袴腰と鹿児島の知った地名が出てきたり、今や貴重な観光資源である桜島に軍事施設があったのかと新鮮な驚きを覚えた。現在の鹿児島市には維新の名所旧跡は至る所にあるが、戦争の傷跡のような痕跡はほとんど皆無というか、目につかない。
溶岩原を見渡す桜島の山腹に穿たれた洞穴の基地。偏執的な行動を取る上官や人生をあきらめた兵士ら、戦争に人生を狂わされ人間性をなくした生身の人間の苦悩がじわじわと伝わる。米機グラマンの機影と機銃掃射の恐怖。戦争のリアルがわかる秀作だった。

桜島 - 梅崎 春生
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