2025年03月08日

ルポ 動物園

共同通信の佐々木央さんの「ルポ 動物園」(ちくま新書)を読む。子ども向けの連載「生きもの大好き」を担当した記者の著作。特に動物好きでもない素人が15年間、750回の連載で学んだこと、考えたことをまとめている。動物園のあり方は、人と動物との関係、関わり方に行き着く。原初的な問題であり、結論はなかなか出せないというのが本書を読んでわかった。

動物園の飼育係は、担当の動物にとってよき調理人でなければならない。生存を維持することは、すなわち食を安定させること。シンプルなことだが、難しいことだ。収集、飼育、展示という動物園の役割も、アニマルウェルフェアという考え方が注目される昨今、変わりつつあるという。

ウェルフェアは「福祉」の意味だが、アニマルウェルフェアは「動物の幸せ」と訳すべきだという。動物の幸せについての科学と倫理。飼育係が今取り組むのは、環境エンリッチメントで、飼育している動物の環境に対し、追加あるいは変更を加えて野生での自然な行動を引き起こ、それが動物福祉につながるという考え方だという。昨今は野生のイノシシやシカ、サル、クマなどが人里に降りて来て、騒動を起こす頻度が増えている。同じ動物である人間だけの都合で自然を破壊する行為はそろそろ見直すべきではないのか。空前のペットブームでの無責任な放置も、多くの人が心を痛めていると思う。動物園の話は人間社会の問題と結びついている。

ルポ 動物園 (ちくま新書 1695) - 佐々木 央
ルポ 動物園 (ちくま新書 1695) - 佐々木 央
posted by あぶりん at 10:12| Comment(0) | 読書日記 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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