現代人のための神話学53講というサブタイトルがある「すごい神話」(沖田瑞穂著、新潮選書)を読む。現代のアニメやゲームのネタとしても生きているという内容に惹かれて手に取る。現代でもなお古代の神が生き続けているのはインドと日本くらいらしいと知り、その特殊な風土を思う。
著者は主にインド神話を研究しているので当然、インドのヴィシュヌ神やシヴァ神といった神様や、マハーバーラタ、ラーマーナヤという叙事詩が詳しく出てくる。折々に神話の一部が紹介されているのだが、舌を噛みそうな名前の神様が多く、それを読むだけでちょっと疲れた。
とはいえ神が起こした戦争は、増えすぎる人類を間引きするため=人口を減らすためという設定が多いのには驚いた。人類は大地の重荷。環境問題をはじめ人類が引き起こしてきた地球規模の問題は古代から予測されていたらしい。神話では、言葉の力が宿る場として「名前」が強調されていて、昔から名前を持つ者の本質を表しているという。「神話は過去の遺物ではない。人の心理は神話を再生産する。変形されたり反転したり、新しい要素を付け加えられたりして、神話は連綿と語られる。今も昔も、人は神話を生き、神話に生かされている。人はそういう存在なのかもしれない」(「おわりに」より)
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