本棚の整理をしていて目に入った開高健の文庫本「知的な痴的な教養講座」を読む。週刊プレイボーイの連載をまとめた一冊。戦場を駆け巡り、釣りで世界を股にかけ、未開の地の食に舌鼓を打った行動派の作家。縦横無尽の語り口に昭和の香りを懐かしんだ。
サントリーのコピーライターをしていた開高さん。酒にはもちろん博識で、ワインや日本酒の話には蘊蓄がいっぱい。「一本のワインには二人の女が入っている。一人は栓を開けたばかりの処女、もう一人は、それが熟女になった姿である」。ジェンダーだ、セクハラだと厳しい昨今では、たぶんクレームがつく文章もある。でも、そこにこそ人生の真実があるのだと思ったりする。
以下、心に残った一節。
・カンボジア国境で見た曳光弾。ヘミングウエーは「人が死ぬことがなければ、戦争は最高のページェントだ」と言った。
・スコッチの中でもマッカランは宝燈を守り、シェリー酒の樽で寝かせる作り方を頑なに続けている。
・毎日、毎週、読みたくなるようなコラムがある。それが新聞ではないか。新聞の復権はコラムにかかっている。
・ルーマニアの諺「月並みこそ黄金」。
・フランソワ・ラブレーは「三つの真実に勝る、一つのきれいな嘘を」と言った。凡庸な真実より、きれいな嘘の方が人生にはしばしば必要だ。
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