2023年12月25日

パーフェクトデイズ

カンヌ映画祭で主演の役所広司が最優秀男優賞を受賞した「パーフェクトデイズ」を見た。小津安二郎を敬愛するヴィム・ベンダーズ監督の作品。東京の公共トイレの清掃人・平山の日常を淡々と描く。静かで穏やかな主人公の日々が繰り返し映し出される。人と社会を映し出す鏡「街角のトイレ」の清掃を完璧にこなしながら、日々のルーチンを繰り返す孤高の男。言葉少ない画面から何を感じとるか。見る人の人生に問いかける、大人の映画だと思った。

文庫本(誰の本か気になる)を読み、フィルムカメラ(オリンパスらしい)で木漏れ日を写し、紅葉の苗を盆栽として育てる。趣味がその人の教養の一端を物語る。過去に何があり、清掃の仕事に就いたのかは想像するしかないが、かつては社会的地位のある人だったのだろう。スカイツリーを仰ぎ見る押上、亀戸(亀戸天神の近くか)あたりが主人公の住まい。渋谷の公園などの公共トイレ(どれも一流の建築家のデザイン)で仕事をし、夜は隅田川を越えて浅草あたりの居酒屋で一杯やる。かつて住んだ東京を思い出しながら懐かしい思いに浸る。

無口な眼差し、光と影、そして車の中で聴くカセットから流れる音楽。70年代のポピュラーが画面に広がる。「朝日のあたる家」はわかったが、あとはあまり知らない曲。きっと主人公の心情を表しているのかな。ラスト大写しになる主人公の顔。特に大事件が起きるわけでもない。ただ気持ちのいい映画だった。

作品で流れる楽曲は以下の通り。

The Animals “House of the Rising Sun”
The Velvet Underground “Pale Blue Eyes”
オーティス・レディング “(Sittin’ On) The Dock Of The Bay”
パティ・スミス “Redondo Beach”
ルー・リード “Perfect Day”
The Rolling Stones “(Walkin’ Thru The) Sleepy City”
金延幸子“青い魚”
The Kinks “Sunny Afternoon”
ヴァン・モリソン “Brown Eyed Girl”
ニーナ・シモン “Feeling Good”

居酒屋の女将、石川さゆりの「朝日があたる家」(浅川マキが歌った日本語バージョン)はさすが。ギターはあがた森魚。
posted by あぶりん at 22:15| Comment(0) | シネマ&演劇 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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