2025年01月27日

Cloud クラウド

黒沢清監督、菅田将暉主演の「Cloud クラウド」をAmazonで見る。転売ヤーの主人公が恨みを買い、ネットで繋がった連中の狩ゲームの標的にされるサスペンス。値上がりしそうなグッズを買い占め、法外な値段でネットに出し売り捌くカラクリを面白く見た。

ただ、登場人物の背景説明が省かれていて、話の展開に説得力がない。クライマックスの派手な銃撃戦も現実離れしていた。もっと脚本を書き込めばグッと面白くなるのにと思った。

菅田の恋人役の古川琴音は不穏な雰囲気を出していて良かった。ミステリアスな役はハマり役だなと思う。主役の作品をいずれ見てみたい。

Cloud クラウド - 黒沢清, 黒沢清, 菅田将暉, 古川琴音, 奥平大兼, 岡山天音, 荒川良々, 窪田正孝
Cloud クラウド - 黒沢清, 黒沢清, 菅田将暉, 古川琴音, 奥平大兼, 岡山天音, 荒川良々, 窪田正孝
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2025年01月26日

ネガティブ・ケイパビリティ 答えの出ない事態に耐える力

帚木蓬生さんの「ネガティブ・ケイパビリティ 答えの出ない事態に耐える力」を読む。精神科医で小説家の氏の持論が展開されていて、医療から芸術、教育にわたる広い範囲で「不確かさの中で事態や情況を持ちこたえ、不思議さや疑いの中にいる能力」の必要性を説く。早急な結論が持て囃され、過激な意見に飛び付く昨今の風潮やマニュアル重視の教育現場へ警鐘を鳴らしていて、共感できるところが多々あった。

ネガティブ・ケイパビリティという言葉・概念は、英国の詩人キーツが最初に使い、精神科医ビオンらが精神分析の現場で再発見した。人間は「分かりたがる脳」を持っていて、それが人類の進歩に繋がったのだが、ポジティブ・ケイパビリティが一方的に重視され、医学界では特にその傾向が顕著となった。氏は自らの精神科医としての診療の中で、ネガティブ・ケイパビリティの重要性を知り、実践として行ってきたという。

シェークスピアや紫式部は、ネガティブ・ケイパビリティを備えた人で、それが歴史に残る文学作品を生み出すことになったという。源氏物語については、大河ドラマ「光る君へ」程度の理解しかないので、深く感銘はしなかったが、医療の話には頷く点が多かった。主に終末医療における治療では、手の施しようがない場合にこそ、ネガティブ・ケイパビリティの出番と説く。「日薬と目薬」という言葉で、「日薬」は気長に時間をかけて対応することの大切さ、目薬は「あなたの苦しい姿は主治医である私がこの目でしかと見ています」という意味。人は誰も見ていない所では苦しみに耐えられないが、ちゃんと見守っている目があると耐えられるものだという。「人の病の最良の薬は人である」(セネガルの言葉)。現代医学では、怪しい者の代表のように言われる「伝統治療師」(呪術師?)も日薬や目薬を活用した試みで、プラセボ(偽薬)効果も、明るい未来を望む脳の習性を応用したものだという。

ネガティブ・ケイパビリティ 答えの出ない事態に耐える力 (朝日選書) - 帚木 蓬生
ネガティブ・ケイパビリティ 答えの出ない事態に耐える力 (朝日選書) - 帚木 蓬生
posted by あぶりん at 11:35| Comment(0) | 読書日記 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2025年01月23日

日本一短い手紙

福井県坂井市丸岡町の「一筆啓上 日本一短い手紙」コンテストに申し込んでいたところ、佳作との連絡があった。電子郵便レタックスが届いていたので、一瞬何事かとドキっとしたが、開けてみると朗報だった。今年は公募に力を入れようと一念発起した。幸先良いスタートに気分がいい。

今回のテーマは「願い」。残念ながら大賞には届かなかったが、100篇以上の佳作に入ったのだから、ちょっと嬉しい。顕彰式は4月20日で入賞作品は読み上げるらしい。

ご褒美は越前織の賞状。あまり賞状に縁のない人生なので、こちらも素直に喜びたい。年賀状じまいが近年は流行りで、手紙を書くことも貰うこともめっきり減ったが、手紙のやり取りの温かさをアピールするのに微力ながら貢献できたかなと思ったりもする。

日本一短い手紙「時」: 第31回一筆啓上賞 - 公益財団法人丸岡文化財団
日本一短い手紙「時」: 第31回一筆啓上賞 - 公益財団法人丸岡文化財団
posted by あぶりん at 18:58| Comment(0) | 雑感 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2025年01月21日

将棋で学ぶ法的思考

木村草太さんの「将棋で学ぶ法的思考」を読む。憲法学者で将棋ファンの木村さんの都立大学での講義「将棋で学ぶ法的思考・文書作成」をまとめた一冊。将棋と法学は論理的考え方が一緒という考えで、将棋愛に溢れている。

将棋は、「二人零和有限確定完全情報ゲーム」に分類されるという。二人でやり、ゼロサム(どちらかの勝ちは、どちらかの負け)で、有限の手番で終わる。サイコロなどのランダムな要素がない。お互いに完全に情報が公開されているーというわけだ。なるほど。

一応、法学部出身なので学生の頃を思い出し、懐かしく法学の話のところも読んだ。巻末には、中村大地八段と片上大輔七段との座談会の収録してあり、AI時代の将棋の話など、面白かった。

将棋で学ぶ法的思考 (扶桑社BOOKS新書) - 木村 草太
将棋で学ぶ法的思考 (扶桑社BOOKS新書) - 木村 草太
posted by あぶりん at 21:24| Comment(0) | 読書日記 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2025年01月19日

桜の園

シス・カンパニー公演「桜の園」を福岡キャナル劇場で見る。チェーホフ4大戯曲(かもめ、三人姉妹、ワーニャ叔父さん)の一つで、ケラリーノ・サンドロヴィッチ演出。ラネーフスカヤ夫人を天海祐希が演じたが、さすがの舞台映え。ドレスが映えるし、気品に溢れる姿に会場からため息が漏れた。

19世紀末のロシアが舞台。農奴解放で落ちぶれゆく領主たちの姿と、その一方で成り上がっていくかつての使用人階級の人々の葛藤を描く。大きな時代の流れの中で、いつまでも浪費癖が治らない夫人、お金がなく借金をしても施しをやめない夫人を周囲は優しい目で見る。

古典的な劇とはいえ、ストーリーは現代においては少々退屈。井上芳雄、荒川良々、大原櫻子、緒川たまき、池谷のぶえ、山﨑一ら実力派の俳優の演技を楽しむ方にウエイトを置いて鑑賞した。一部俳優の声が小さくて聞き取りにくかったのが少し残念だった。

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桜の園 (岩波文庫 赤 622-5) - チェーホフ,A.P., 小野 理子
桜の園 (岩波文庫 赤 622-5) - チェーホフ,A.P., 小野 理子
posted by あぶりん at 18:53| Comment(0) | シネマ&演劇 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする