2024年08月31日

にゃんこパワー

「にゃんこパワー 科学が教えてくれる猫の癒しの秘密」(カリーナ・ヌンシュテッド、ウルリカ・ノールベリ著)を読了。猫の不思議な癒しの力を数々のデータや逸話から紹介している。うちにも家族がいるので、なるほどなあと頷きながら読んだ。


猫が幸福感を広めるのは「ミャオ効果」といい、猫の動画などを見るとネガティブな感情が軽減される。猫は家族の中でも病気や悲しみを抱えている人に懐く(経験的にそうだと思う)。うちにもいる黒猫は西欧で魔女の使いのように言われた時代もあったが、日本では福猫と呼ばれて大事にされていたそうな。舞台に黒猫がいると、興行が成功するという言い伝えがある地域もあったらしい。


「人間は、動物たちと暮らし世話をするようにプログラミングされている」と唱える精神科医もいる。病気になると、猫の癒しやサポート力を実感させられる。心が弱った時に近くにいる大切さを教えてくれる。犬よりも研究が進んでいなかった猫の最新の研究成果にいろいろと学んだ。



にゃんこパワー―科学が教えてくれる猫の癒しの秘密―

にゃんこパワー―科学が教えてくれる猫の癒しの秘密―



  • 出版社/メーカー: 新潮社

  • 発売日: 2024/06/27

  • メディア: Kindle版






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2024年08月30日

箱男

観てから読むか、読んでから観るか。角川文庫だったか、確かそんなCMがあったが、今回は安部公房の「箱男」で「観てから読む」をやってみた。「匿名という自由の行き着く先。作者は全世界に罠を仕掛けた」。カッコいい惹句の帯につられてページを繰る。


新聞記事や書き置き、供述調書などを挟み込む構成で、作者自らが撮ったモノクロ写真も掲載されている。スクリーンで見た箱男の異様な姿を思い出しながら読めたという点では、想像力の翼が広がりやすかった。テレビやラジオのニュースから離れられない現代人が、覗きという行為によって初めて自由な境地を得る。箱の中では、覗かれないという意味で「匿名」であり、その観点から言えば、現代のSNS全盛時代を予見した作品と言えるかもしれない。


後半は語り手が目まぐるしく代わり、荒唐無稽な展開にも見えるが、解説によると、そこは必然の流れらしい。原作を読んで、この部分は映画ではカットされているんだなあと考えたりする楽しみもあって、それはそれでよかったと思った。



箱男(新潮文庫)

箱男(新潮文庫)



  • 作者: 安部公房

  • 出版社/メーカー: 新潮社

  • 発売日: 2024/03/07

  • メディア: Kindle版





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2024年08月24日

箱男

安部公房原作の「箱男」(石井岳龍監督)を公開初日に観た。石井監督が映画化を考えてから27年、安部公房生誕100年の節目に、ようやく作品となった。段ボール箱を被って街に隠れ、世間を覗き見する箱男。異様な映像にかつて見た寺山修司の前衛映画を思い出す。最後のオチも寺山街頭劇のラストを彷彿とさせた。


箱男を意識する者は、箱男になる。ダンボールの内と外は、人の心の内(プライバシー)と社会なのか。箱の中では自由で安心だが、外に出ると不安でいっぱい。箱の中でノートをつける男は作家自身を表しているのだろうか。


永瀬正敏、浅野忠信、佐藤浩市というベテランにまじって、ヒロイン役の白本彩奈がスクリーンデビュー。子役上がりらしいが、看護師役で可憐なヌードにも挑戦し、鮮烈な印象を残した。


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2024年08月21日

コレモ日本語アルカ?

「コレモ日本語アルカ? 異人のことばが生まれるとき」(金水敏著)を読了する。日本語で中国人が喋るのをマネする時の「アルヨことば」について考察した一冊。いまだにマンガや映画などで聞く「コレオイシイアルヨ、ノムヨロシイ」という言い方だが、実際にはこんな言葉を使う中国人はいない。なぜ、ここまでこんな言葉が生き延びてきたのか。


背景には、中国や中国人に対する差別や蔑視があったらしい。文学作品などで最初に出てきたのは、かの宮沢賢治の「山男の四月」。手塚治虫やゼンジー北京など、いろんなジャンルで「アルヨことば」は活躍している。


言語学的にはピジンと言って、二つ以上の言語が接触する場で自然発生的に用いれられる奇形的な言葉。耳で覚えた片言が習慣化したものをいう。文法ができるほどに整備されると「クレオール」と呼ぶ。サイボーグ009やひょっこりひょうたん島、らんま1/2など懐かしいマンガ、アニメも出てきて楽しく読めた。



コレモ日本語アルカ? 異人のことばが生まれるとき (岩波現代文庫 学術467)

コレモ日本語アルカ? 異人のことばが生まれるとき (岩波現代文庫 学術467)



  • 作者: 金水 敏

  • 出版社/メーカー: 岩波書店

  • 発売日: 2023/06/16

  • メディア: 文庫





posted by あぶりん at 21:19| Comment(0) | 読書日記 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2024年08月20日

すばらしい暗闇世界

椎名誠のエッセイ「すばらしい暗闇世界」(新潮文庫)を読む。暑いこの時季はあんまり根を詰めずに軽い読み物を挟んでいきたい。そんな時には、シーナのエッセイがよい。


洞窟に潜ったり、変な生き物に遭遇したり、極寒の地を彷徨ったり。主にナショジオ(ナショナル・ジオグラフィック)に連載した文章を文庫にまとめている。怪しい探検隊の頃を思い出しながら楽しく読む。


以下、take note!


・エスキモーは近年「イヌイット」と言い換えられているが、実はエスキモー自身は「生肉を食う奴ら」という意味のエスキモーという呼び名に抵抗はなく、むしろ誇りさえ持っているのだとか。イヌイットは「真の人間」という意味らしいが、先進国の人間が勝手に「差別用語だから」どうのこうのという立場で考えるものではない(なるほど)。


・アリは地球上に1京(1兆の1万倍)も居て、その総体重は人類の総体重に等しい!!しかも1万2千種もいる(驚嘆)。



すばらしい暗闇世界 (新潮文庫 し 25-43)

すばらしい暗闇世界 (新潮文庫 し 25-43)



  • 作者: 椎名 誠

  • 出版社/メーカー: 新潮社

  • 発売日: 2022/12/23

  • メディア: 文庫





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