2024年07月23日

パリ 都市の記憶を探る

まもなく始まるパリ五輪。かつて訪れた花の都を思い出しながら「パリ 都市の記憶を探る」(石井洋二郎著)を読む。門、橋、塔、広場、駅など、過去と現在が交錯する。中世から現代まで時間を超越して残る街の魅力が改めて分かった。


街路の呼び名に著名人の名前がこれだけついているとは知らなかった。考えてみれば、玄関口はシャルル・ドゴール空港だし。懐かしかったのは、サン=ラザール駅。中央駅がないパリの街、ノルマンディーの香りがしたサン=ラザールの駅舎、モネの作品の通りだった。


そんな街を舞台に開かれるパリ五輪の開会式。この時ばかりは平和な気分でテレビを見たいと思う。



パリ ――都市の記憶を探る (ちくま新書)

パリ ――都市の記憶を探る (ちくま新書)



  • 作者: 石井洋二郎

  • 出版社/メーカー: 筑摩書房

  • 発売日: 2014/09/05

  • メディア: Kindle版





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2024年07月21日

壊れる日本人 再生編

柳田邦男の「壊れる日本人 再生編」を読む。大人の絵本のススメを熱心に説くようになって以来、柳田さんの著作は読んでなかったが、これはその前に書かれたエッセイ的な著作。軽い気持ちで手に取ったが、真摯な言葉へのこだわり、心に刺さる言葉があった。


「トラウマの発見」の章。阪神淡路大震災までは、トラウマという言葉さえなく、従って被災者ケアという視点が抜け落ちた対応だったと指摘する。医療現場などにおける「スピリチュアルケア」もまだまだ発展途上。終末期における患者、看取る側の心の平安はいかに確保するべきか。具体的エピソードを提起し課題を投げかける。


日野原重明先生の言葉は、「いくつになっても創めることを忘れない生き方」をしよう。さっそく日野原さんの本をネット注文した。



壊れる日本人 再生編 (新潮文庫)

壊れる日本人 再生編 (新潮文庫)



  • 作者: 邦男, 柳田

  • 出版社/メーカー: 新潮社

  • 発売日: 2008/10/28

  • メディア: 文庫







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2024年07月16日

おいハンサム!!

人気テレビドラマのコメディー「おいハンサム!!」を見る。吉田鋼太郎が父親役で、娘にクールビューティーな木南晴夏、健康そうな佐久間由依、ミニが似合う武田玲奈、奥さんはMEGUMIというキャスト。恋と家族とごはんに大騒ぎの日常を明るく賑やかに描いていて気楽に見れた。


娘三人はそれぞれ独居しているのに、ちょくちょく実家に帰ってきては飯を食う。一晩寝かせた朝カレー、チキンライスが主役のオムレツ、茹でたてのジャガイモで作るポテサラなど、ザ・家庭料理。だべりながら支度をし、みんなで食べる。娘たちからは愚痴が多いけど、なんてことない日に家族で食卓を囲む平和な空気のかけがえの無さを思う。


不倫でバツイチだったり、妻子ある男に惚れたり、同棲しつつも結婚を躊躇ったり。現代的な恋模様というか、交際の風景というか、これがリアルなんだろうなと我が家のことを考えたりする。大問題は一切起きないけれど、家族の幸せを守ろうとする父親のよく分からぬ演説(説教?)と暴走が楽しい作品だった。


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2024年07月07日

レオン

ナタリー・ポートマンがヒロイン・マチルダを演じた「レオン」(リュック・ベンソン監督)の完全版をAmazonで見る。1994年公開の頃に一度見たはずだが、今回はディレクターズカットということで、随分と印象が違った。10代のナタリーの少女から大人になる頃合いの魅力が前面に出ていて、ジャン・レノ演じるレオンを戸惑わせる。オジサンと少女というより、男と女の関係が強く印象づけられる仕上がりになっていた。


もともと監督はこちらの方を公開したかったらしいが、セックスアピール=刺激が強すぎるという理由で問題部分がカットされたという。それはマチルダがレオンに初体験を持ちかける場面だったり、銃で人を殺害する練習する一コマだったらしい。


ニューヨークを舞台に腐った権力に家族を皆殺しにされたマチルダの復讐劇。復讐はいけないと諭しながらもマチルダを愛してしまったレオンは自らを犠牲にして仇討ちを果たす。マチルダの瞳、光の強さが網膜に焼き付いて離れない。レオンが可愛がった鉢植えの植物を芝生に植えるマチルダの姿、切なさが胸に迫った。



レオン 完全版 [Blu-ray]

レオン 完全版 [Blu-ray]



  • 出版社/メーカー: 角川書店

  • 発売日: 2013/04/19

  • メディア: Blu-ray





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2024年07月06日

恐るべき緑

ベンハミン・ラバトゥッツというチリ在住の作家が書いた「恐るべき緑」を読む。塩素ガスの開発者フリッツ・ハーバー、ブラックホールの存在を示唆したカール・シュヴァルツシルト、革新的な数学者アレクサンドル・グロタンディークと望月新一、量子力学のヴェルナー・ハイゼンベルク、ルイ・ド・ブロイ、エルヴィン・シュレーディンガー。名だたる科学者の生涯をモチーフに戦争と科学の結びつきを描いている。


ノーベル賞クラスの科学者たちが主人公。まさに寝食を忘れて研究に没頭する様がたびたび出てくる。天才と狂人は紙一重という表現がピタリとくる。作品は事実とフイクションが混ざり合って、どこまでが史実で、どこからが作り事なのか、読んでいても全く判然としない。作家の想像力の賜物なのだが、故人とはいえ遺族(子孫)のクレームはなかったのだろうかと、要らぬ心配をしてしまう。


塩素ガスが化学兵器となる一方で、窒素の大量生産が可能になったことで窒素肥料が世界の農業生産力を高めた。それ以前は糞尿だけでなく戦死者などの遺体も肥料として活用していたというショッキングな事実を知る。また、量子力学は誰も理解できない数式の上に構築された理論がAIやIT技術を発展させ続けている。砂上の楼閣のような現代社会の危うさが頭の中にイメージとして浮かんだ。そら恐ろしい小説集だと思った。



恐るべき緑 (エクス・リブリス)

恐るべき緑 (エクス・リブリス)



  • 出版社/メーカー: 白水社

  • 発売日: 2024/02/18

  • メディア: 単行本





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