「センスの哲学」という絶妙なタイトルに惹き寄せられて本を手に取った。立命館大の千葉雅也教授著。センスとはそもそも何なのかという命題の解説より、美術が興味のメインにある著者が芸術全般への接し方を説き、暮らしに芸術を取り入れることを勧めるくだりに心を動かされた。
例えば絵画。作品の意味を理解するだけではなく、絵画の中にリズムを見出す鑑賞のあり方を説く。映画も音楽もリズムで読み解くことができ、Chat GPTの生成する文章は、脱意味化されたリズムであると。ライフハックとして、何かをやるときには、実力がまだ足りないという足りなさに注目するのでなく、「とりあえず手持ちの技術と、自分から湧いてくる偶然性で何ができるか」というふうに考えるという。
・芸術に関わるとは、そもそも無駄なものである時間を味わうことである。
・現実の目的達成と違い、芸術は多様性や相対性を教えてくれる。人生のリズムもいろいろでいいじゃないかと。
・映画でも真意を見抜けるだろうかと自分を責める見方はしない。自分にはここが気になる、それだけでOK。