今展は絵画だけでなく彫刻や金属による自在など多様な手法の写実作品が一堂に集められた。もともと絵画はそこにある人や物を人の手によって記録することから始まったのだろう。そういう意味で写実は原点であり、人の欲求の根本にあるものではないか。近代になって写真やコピー機が発明されても絵画や彫刻などで写し取る行為は続く。
樹脂の水槽に泳ぐ金魚(深堀隆介)、鉄自在イグアナ(本郷真也)、静物シリーズ(秋山泉)、義手シリーズ(佐藤洋二)など現代作家の作品が印象に残る。樹木を描いた作家が語っていたのは、刻々と変わる樹木の姿を見ながら写実をする。一瞬ではなく、時間をかけて人の目を通して感じたものが写し取られる。デジタル写真とは違う、作家の思いが作品には宿る。その魅力が見る者に訴えかけるのではないかと思った。
