2020年06月21日

無影燈

渡辺淳一の「無影燈」を読む。病院を舞台にした恋愛小説で、かつて「白い影」というタイトルでドラマにもなった。1970年代の渋谷、池尻あたりの病院の設定で、腕の立つ外科医のふしだらな行動の裏にある秘密と、彼女である看護婦との関係がシリアスに描かれる。

昭和の時代にサンデー毎日に連載された話題作だけあって、エロティックな場面もたっぷり盛り込まれている。清純派の女性歌手が妊娠中絶したり、銀座のクラブのホステスと浮気したり、週刊誌のゴシップネタ的なエピソードも次々出てくる。今の時代でもこういうことはあるかも、と思わせる。

医療小説の古典みたいなところもある。院長は診療報酬のことを一番に考え、患者の生死と向き合う医師は、医学的に無駄な治療でも患者とその家族に納得してもらうため、最善の治療を続ける。文中に出てくる「いかに殺すか」を考えるのも医者の仕事だという言葉は怖ろしいけれど、なるほどと思う一面もある。ちなみにドラマで主役の医師を演じたのは田宮二郎、彼女の看護婦は山本陽子。このほか中野良子、中山麻理らが出演していた。


無影燈 上 (集英社文庫)

無影燈 上 (集英社文庫)

  • 作者: 渡辺 淳一
  • 出版社/メーカー: 集英社
  • 発売日: 2012/07/20
  • メディア: 文庫



無影燈 下 (集英社文庫)

無影燈 下 (集英社文庫)

  • 作者: 渡辺 淳一
  • 出版社/メーカー: 集英社
  • 発売日: 2012/07/20
  • メディア: 文庫
posted by あぶりん at 14:23| Comment(0) | 読書日記 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2020年06月20日

メルカリその後

メルカリ初出品のテレカは度数に応じて100円引き程度で出してみたが、引き合いがないので500円ほど値下げ。すると、すぐに売れた。やはり買ってもらえるのは嬉しいもの。きれいに梱包して近くのファミマからメルカリ便で送る。

メルカリ便は、スマホのQRコードをファミマのチケットステーションの機械にかざすと、レシートが出てくるので、それをカウンターの店員さんに渡す。店員さんが送り状とビニールポケットのついたシールをくれるので、送り状を自分でポケットに入れて荷物に貼り付ける。それでOK。シールはA4の半分大なので、文庫本ならA4封筒に入れて二つ折りにして出すと良い。

カードの後、売れたのはエアコンのリモコン。付け替えて残った古いリモコン。捨てるよりは、と出してみると、300円で即売買成立。儲けは数10円だが、捨てるよりはエコ(手間はかかるけど)。ネットで調べてみると、故障した家電のリモコン買い替え需要を狙った商売もあるらしい。世の中の商売事情は面白い。
posted by あぶりん at 08:55| Comment(0) | 雑感 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2020年06月14日

科学者はなぜ神を信じるのか

仕事の関係で先日、教会のミサに出席する機会があった。家族がミッション系の学校に通っていてプロテスタントの礼拝式には出たことがあったが、カトリックのミサは初めて。コロナでしばらく中止されていたが、緊急事態宣言が解けミサも3カ月ぶりに再開した。教会内の座席はソーシャルディスタンスがとられ、パンをいただく時以外はマスク着用。賛美歌も歌わない。世界の人たちが早くコロナを克服し平和な日々を取り戻せるよう厳かに祈った。

そんな体験もあって、読みかけていたブルーバックスを手に取る。コペルニクスからホーキング博士まで、天地創造をめぐる葛藤、教会との対立を乗り越えて、宇宙の真理を追求した科学者たちの軌跡をたどる一冊。宇宙の果てには何があるのか、人間の頭で考えてもその先は想像できない。今や常識となったビッグバン理論にしろ、ではその前の無から生み出したものは何者なのか。創造者=神というキリスト教の論理に抗して、探究を続けたばかりではないことが、よく分かる。

神というと人間の形を想像するが、そうではなく、自然の摂理そのものが神であるという認識を著名な科学者たちは持つに至っている。かのアインシュタインも然り。科学読み物程度の知識しか持たないが、今や相対性理論で知られるアインシュタインは古典的な物理学になるらしい。現代はもっぱら量子物理学の時代だという。やさしく書かれているこの本を読んでも、なかなか理解は難しいけれど、この宇宙の果てしなさを改めて思い、人間の小ささを感じるのだった。


科学者はなぜ神を信じるのか コペルニクスからホーキングまで (ブルーバックス)

科学者はなぜ神を信じるのか コペルニクスからホーキングまで (ブルーバックス)

  • 作者: 三田一郎
  • 出版社/メーカー: 講談社
  • 発売日: 2018/06/25
  • メディア: Kindle版
posted by あぶりん at 09:13| Comment(0) | 読書日記 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2020年06月12日

渋谷

最近、ずっと本棚に眠っていた1冊を手にすることが増えた。読みかけて放置していたり、買ったまま積読だったりした本。外に出ることが減りおうち時間が増えたからだろうか。以前から思うことだが、本には読み時があるようで、仕事で必要な本以外は読みたい時が来るまでじっと待つ。それで今回手にしたのは、藤原新也著「渋谷」。

外出自粛で閑散としたスクランブル交差点が出るたび、あの雑踏の渋谷が懐かしく思い出される。人の心をざわつかせる何かがそこにはある気がしていた。本は渋谷のことと言うより、シブヤ的日本を書いている。都市伝説という一言では片付けられない、ギャルたちのインタビューとエピソード。2008年の購入だから14年寝かせていたことになるが、内容は古びていない。

雑踏にいることで真空状態になる。音や光や膨大なノイズが心地よい環境を生む。膨大な情報に意味がなくなることで、そこに自分を埋め込むことができる。都市が自然の中にいるのと一緒の癒しの場となる。そうした一文に我が意を得たりと思う。東京で暮らす中でなぜか人の多く集まる場所を選んで出向くことが多かったのはごく自然の行動だったのだ。藤原さんのウェブサイト、有料のウェブマガジンはなかなか興味深い。購読してみようか。


渋谷 (文春文庫)

渋谷 (文春文庫)

  • 作者: 藤原 新也
  • 出版社/メーカー: 文藝春秋
  • 発売日: 2012/09/20
  • メディア: Kindle版
posted by あぶりん at 21:20| Comment(0) | 読書日記 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2020年06月06日

ガラス越しの面会

ケアハウスに入っている母に会いに行った。とは言っても、コロナ禍で面会は禁止で、平日のみの事前予約制、1回15分までという条件付き。こちらは中庭の椅子に座り、母は窓の向こうのハウスの中。お互い顔を見ながら携帯で話をするというシステムだった。

各地で医療機関や介護福祉施設での院内感染が起きており、施設の側は最高レベルの警戒態勢を敷いている。かかっていても自覚症状がないというのが新型コロナの厄介なところ。一律規制する以外に感染リスクを減らす手立てはない。ただ入居している高齢者にとって、外部の人に会えないストレスはかなり大きい。自身わずか2週間の隔離生活でも(自由に外出できたけど)結構は負荷がかかったし、杯を通してもノミニケーション自粛もそれなりのストレスになっている。足が悪かったりして身体的に自由に外出できない高齢者にとって、家族らの訪問は本当に楽しみなのだ。

実はうちの母も最近妄想が出るようになって、一度顔を見せて安心させてあげてとの施設からの連絡で急きょガラス越し面会に行った次第。自宅待機の多い家族も同伴して行ったが、とても喜んでもらえた。これで少しは状態が落ち着いてくれると良いのだが。施設ではこうした状況の長期化が予想されるため、ZOOMなどを使ったオンライン面会を企画しているという。遠隔地にいる家族には有難いサービスかもしれない。感染リスク回避と心のケアと、バランスを取りながら手探りの対応を続けるしかないのだろう。
posted by あぶりん at 09:16| Comment(0) | 雑感 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする