2018年09月23日

藤田嗣治展

没後50年記念の藤田嗣治展を東京都美術館でみた。パリ・モンマルトルを拠点に乳白色のバックに裸婦を描いたフジタのイメージが覆される展覧会だった。

南米放浪で描いたドギツイ色彩の絵や、東北や沖繩など日本各地に主題を求めた作品、そして戦争画。第1次、第2次世界大戦に飜弄され、戦後は戦争への加担を問われ、再びフランスへ。ランスに住み、フランスの国籍を取り、キリスト教の洗礼を受け、レオナール・フジタとなった。

テーマや画風の変遷を見ながら思ったのは、藤田はただ描きたかったのだということ。絵への純粋な情熱が全てではなかったのか。女性が代わるたびに絵が変わる、というか、画風が変わるたびに愛した女性も代わる、そんな生涯に芸術家の自由な心を感じた。

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藤田嗣治作品集

藤田嗣治作品集

  • 作者: 清水 敏男
  • 出版社/メーカー: 東京美術
  • 発売日: 2018/08/02
  • メディア: 大型本



藤田嗣治「異邦人」の生涯 (講談社文庫)

藤田嗣治「異邦人」の生涯 (講談社文庫)

  • 作者: 近藤 史人
  • 出版社/メーカー: 講談社
  • 発売日: 2006/01/13
  • メディア: 文庫



藤田嗣治の少女

藤田嗣治の少女

  • 作者: 藤田 嗣治
  • 出版社/メーカー: 講談社
  • 発売日: 2018/02/17
  • メディア: 単行本



美術手帖2018年8月号増刊 藤田嗣治

美術手帖2018年8月号増刊 藤田嗣治

  • 作者:
  • 出版社/メーカー: 美術出版社
  • 発売日: 2018/07/30
  • メディア: 雑誌
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2018年09月20日

江戸東京の明治維新

国立歴史民俗博物館の横山百合子教授の岩波新書を読んだ。考えてみれば、わずか150年前のことなのに、市井の人々がどんな暮らしをしていたのか、よく知らない。映画やテレビの幕末ものは、いわば権力闘争であったり、国のかたちをどう作っていくかが、志士たちの活動を中心に語られることが多い。

「150年前の胸に刺さる現実」という帯に惹かれて手に取った一冊だったが、歴史に名を残さぬ人たちの日常を垣間見ることができた。特に遊廓や屠場で働く人たちのエピソードは知らないことばかり。いなりと巻き寿司を組み合わせた寿司を「助六」と呼ぶのは、遊郭を舞台にした歌舞伎「助六由縁の江戸桜」の主役助六と遊女の揚巻にあるという小話に、へえと感心。江戸の庶民にとって、いかに遊郭が身近にあったかを物語る。

賎民層を支配した弾左衛門の存在も初耳で、人々が嫌がる仕事を任せる代わりに、そのまとめ役には特権を与える。そうした統治のやり方が、その後の差別に繋がっていったことが理解できた。


江戸東京の明治維新 (岩波新書)

江戸東京の明治維新 (岩波新書)



  • 作者: 横山 百合子

  • 出版社/メーカー: 岩波書店

  • 発売日: 2018/08/22

  • メディア: 新書








 






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2018年09月18日

仙厓礼讃

博多の仙厓和尚の書画コレクションで知られる日比谷・出光美術館で、書画展「仙厓礼讃」をみた。人生50年の時代に還暦過ぎまで住職を務め、その後は隠居をし、好奇心の赴くままに祭りや珍しいものを見物に行ったり、地元の人たちと交友を広げたりした。米寿まで人生を謳歌した、いわば「老後の達人」の日々を書画でたどる。

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有名な「□ △ ○」(出光佐三は海外向けに「ユニバース」と名付けて紹介した)はじめ、老人六歌仙画賛など、ユーモアあふれる作品が並ぶが、その作品が語るのは「人にはだれにも仏性がある」など、禅の教えだ。


「苦も楽も心ひとつの置きどころ 笑うて暮らせ人の一生」。先輩から教えてもらい、座右の銘としている仙厓さんの言葉だ。

死にとうない (新人物文庫)

死にとうない (新人物文庫)

  • 作者: 堀 和久
  • 出版社/メーカー: 新人物往来社
  • 発売日: 2010/06/07
  • メディア: 文庫



画題でみる禅画入門: 白隠・仙厓を中心に

画題でみる禅画入門: 白隠・仙厓を中心に

  • 作者: 浅井 京子
  • 出版社/メーカー: 淡交社
  • 発売日: 2017/03/15
  • メディア: 単行本



仙厓(せんがい) 無法の禅

仙厓(せんがい) 無法の禅

  • 作者: 玄侑 宗久
  • 出版社/メーカー: PHP研究所
  • 発売日: 2015/06/12
  • メディア: 単行本(ソフトカバー)
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2018年09月17日

愛しのアイリーン

贔屓にしている安田顕主演の「愛しのアイリーン」を日比谷のシャンテシネマでみた。知らなかったが、ビッグコミックスピリッツに新井英樹さんが連載していたマンガが原作という。農山村の過疎、高齢化と嫁不足、外国人労働者の移住など、社会問題を真っ向から捉え、話題になったらしい。

吉田恵輔監督による映画化は、暗くなりそうな話を、安田演じる四十男の焦りと滑稽さをうまく描いていた。安田が「お○んこ!」と叫び、職場やスナックのお姉さんにむしゃぶりつく様は、まさに快演。フィリピンの嫁・ナッツ・シトイとの、日本語ができないゆえのコミュニケーションのもどかしさもおかしみが出ていた。

フィリピーナを妻にする人たちは、身近に普通に居る。夫に先立たれたり、逃げられたりして、母子家庭になるケースは枚挙にいとまがないだろう。映画は、いろんな騒動をデフォルメした娯楽作だが、現代のリアルな嫁取り物語でもある。

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posted by あぶりん at 15:56| Comment(0) | シネマ&演劇 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2018年09月16日

星の王子さま

Project Nyxの公演を池袋の東京芸術劇場で見た。寺山修司がかの有名なサン・テクジュペリの星の王子さまを舞台にした。その原作を宇野亜喜良の構成・美術と金守珍の演出で料理した。

見えるものを見ない、見えないものを見る。現実と夢、真実と幻想、地獄と天国。元売春宿のホテルを舞台に、大人の童話と寺山ワールドが交錯する。

若林美保、ヴィヴィアン佐藤、エロチカ・バンブー、フラワー・メグ、中山ラビといった、往年のミューズたちが一芸を披露する。流れたジュリーのヒット曲「サムライ」の歌詞が心に残る(阿久悠の作詞、やっぱりすごい)。

劇中の説明では、寺山版では最後、物語の舞台のホテルが崩れ落ちてラストだった。現実世界の出来事が劇場化してフィクションを追い越してしまっている2018年版では、むしろ原作の「星の王子さま」のピュアなラストを生かしたという。

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星の王子さま (集英社文庫)

星の王子さま (集英社文庫)

  • 作者: Antoine de Saint Exup´ery
  • 出版社/メーカー: 集英社
  • 発売日: 2005/08/26
  • メディア: 文庫



星の王子さま ポップアップ絵本・完全翻訳版

星の王子さま ポップアップ絵本・完全翻訳版

  • 作者: アントワーヌ・ド・サンテグジュペリ
  • 出版社/メーカー: 岩崎書店
  • 発売日: 2009/10/09
  • メディア: 単行本
posted by あぶりん at 22:51| Comment(0) | シネマ&演劇 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする