2017年11月20日

「ケの美」展

銀座のポーラミュージアム アネックスに「ケの美」展を見に行った。ハレ(晴れ)に対するケ。ふだん、日常という意味だが、ハレに比べると、最近はあまり使わない言葉。ふだんの暮らしの中に「美」を見いだす試みで、展覧会ディレクターの佐藤卓さんの呼びかけに、14人の著名人が展示参加している。


実物とパネルの展示で、それぞれの思いをつづった一文が掲げてある。話を聞いたり、本を読んだりして知っている人もいたが、知らない人の方が多かった。でも、台所回りの物や掃除・洗濯道具、文房具など、身の回りのもので、「これいいよね」と気に入ったものを見ると、だいたいどんな考えの人なのか、分かるものだ。


マルチクリエイターの小山薫堂さんは、魯山人の「坐辺師友」を座右の銘としてあげ、ものたちへの愛情を告白していた。展示していたのは、風呂の手桶で、わざわざ注文した代物。ちょっと一般人にはマネできないが、確かに格好はよかった。うらやましいなあ。料理研究家の土井善晴さんは、具だくさん味噌汁の写真が目を引いた。トースト入りの変わり味噌汁など、どれもうまそうで、感覚的には一番自分にぴたっと来た。隈研吾さん、小川糸さんの展示も印象的だった。入場無料。

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posted by あぶりん at 16:28| Comment(0) | アート | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2017年11月19日

ちょっと、まってください

ナイロン100℃の新作を下北沢の本多劇場でみた。劇団主宰で作・演出のケラリーノ・サンドロヴィッチによると、一度やりたかった不条理喜劇だという。あえて意味を持たせるならば、戯画化された家族劇によって、家族っていったい何なのかを問うた一作といえるのかも。


不条理劇といえば以前、サミュエル・ベケットの「ゴドーを待ちながら」をみた。二人の男がひたすらゴドーを待ち続けるのだが、せりふの独特の「間」が印象に残っている。今作は日本の不条理劇の大家・別役実さんへのオマージュで、別役作品の引用や文体の模倣、様々なアイコンを散りばめたという。


残念ながら別役さんの舞台をみてないので、細かいパロディーは分からなかったが、不条理な設定や会話、そして独特の間には、つい笑ってしまった。五つの赤い風船「遠い世界に」、もとまろ「サルビアの花」。唐突に始まる懐かしき名曲の劇中歌が不条理な世界を際立たせていて、なかなかの選曲だったと思った。

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ゴドーを待ちながら (白水Uブックス)

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  • 作者: サミュエル ベケット
  • 出版社/メーカー: 白水社
  • 発売日: 2013/06/18
  • メディア: 新書



新訳ベケット戯曲全集1 ゴドーを待ちながら/エンドゲーム

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  • 作者: サミュエル・ベケット
  • 出版社/メーカー: 白水社
  • 発売日: 2018/03/02
  • メディア: 単行本



改訂を重ねる『ゴドーを待ちながら』 〔演出家としてのベケット〕

改訂を重ねる『ゴドーを待ちながら』 〔演出家としてのベケット〕

  • 作者: 堀 真理子
  • 出版社/メーカー: 藤原書店
  • 発売日: 2017/09/21
  • メディア: 単行本



サルビアの花[もとまろ][EP盤]

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  • アーティスト:
  • 出版社/メーカー: キャニオン
  • メディア: LP Record



青春フォーク伝説(1)空に星があるように.サルビアの花.友よ.受験生ブルース.遠い世界に.竹田の子守唄.人間なんて

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  • 出版社/メーカー: ビクターエンタテイメント株式会社
  • メディア: CD
posted by あぶりん at 17:05| Comment(0) | シネマ&演劇 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2017年11月17日

サンタクロース会議

こまばアゴラ劇場で、平田オリザさん作・演出の子ども参加型演劇をみた。コミュニケーションの力をつけるというより、コミュニケーション嫌いにならないように、子どもたちへの演劇教育を実践している平田さんが10年前から続けている公演。舞台と客席の垣根を取り払い、子どもの意見に受け答えしながら物語は展開していく。


サンタがいるのか、いないのかを含めて、サンタにまつわる問題を議論する。平田さんによると、演劇はギリシャ時代、哲学や民主主義とともに始まった。日本の学校教育では道徳としてとりあげているテーマも含めて、哲学カフェのような感じで演劇を教育の場に持ち込みたいという。


公演は1時間程度で、子ども向けの内容かと思ってみたのだが、大人に向けて家庭での会話を促す狙いもあると分かった。サンタは空を飛べるの? いい子と悪い子はどう見分けるの? 舞台からの青年団の役者の質問に答える子どもたちの意見が素朴でつい微笑んでしまう。しこみではなく、アドリブで広がっていく舞台はある意味、演劇の本質かもしれないと思った。
posted by あぶりん at 12:03| Comment(0) | シネマ&演劇 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2017年11月15日

この熱き私の激情

カナダで高級娼婦をしていたネリー・アルカンの小説「ピュタン-偽りのセックスにまみれながら真の愛を求め続けた彼女の告白」を舞台化。7人の女優・ダンサーが36年で自ら命を絶った彼女の人生を独白する。


舞台には2階建てのセットが組まれ、影の部屋、天空の部屋などと名付けられた個室で、時々の彼女を演じる。幻想の部屋の女を演じたのは、芦那すみれ。スリムなスタイルと、セクシーな動きが魅力的だった。後で確認すると、にっかつロマンポルノのリブートプロジェクトで行定勲監督「ジムノペディに乱れる」のヒロイン役で出ていた子だった。


天空の部屋の小島聖は貫禄の演技だったが、かつての輝きはなかったかな。影の部屋の女を演じた松雪泰子は、妖艶な色気にノックアウトされそう。部屋それぞれの演出も凝っていて、背景に吹雪が舞う部屋は印象に残った。天王洲銀河劇場にて。

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posted by あぶりん at 09:38| Comment(0) | シネマ&演劇 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする