2017年10月30日

あゝ荒野 後編

ボクシングの激しい打ち合い、つい手に汗握って熱くなってしまった。映画だと分かっていても、血潮が飛び顔が腫れる場面が続くと、迫力に圧倒される。因縁の相手、ユウジとの壮絶な試合。ケンジとの宿命の対決。憎しみを超えたシンジの闘争心むきだしのファイトがまぶしかった。


寺山修司が生きた戦後、昭和の時代。様々な問題が噴出している3・11後の日本に、寺山のつづった物語はどんなメッセージを発するのだろう。そんな興味で作品を見たが、結局「つながり」というのが一つのキーワードだった。友だち、親と子、人と社会、それぞれがつながりたがっていて、できないでいる。登場人物それぞれのこれから、未来は、不安の中にある。「荒野」を歩き続けるしかない。
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2017年10月20日

アウトレイジ最終章

完結編ということで見に行った。「ビヨンド」ほどの衝撃はなく、ある程度想定されたラストではあった。タケシ演じるオオトモが次々と敵を討つ。問答無用の殺し方はドライで、陰湿さがない。テレビゲームのようにバンバン殺ってしまう。


今回も主な出演者は男ばかり。会話の中では「奥さん」が出てくるが、画面には男の相手をするホステスや風俗嬢くらいしか出てこない。女性や子どもが殺されるような場面がないから、カラっとした印象があるのかもしれない。


韓国の闇社会を仕切るボスの方が、情に厚く、義を重んじる。勢力争いに血道をあげ、裏切りを繰り返す日本のヤクザと対比することで、日本の社会を皮肉っているのか。まあ、ラストは北野監督の美学かなあ。
ラベル:北野武
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2017年10月17日

幣舞橋の夕日

出張で道東の釧路へ行った。「世界三大夕日」の一つといわれる幣舞橋(ぬさまえばし)から夕日を眺めた。

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午後4時半ごろから日没ショー。水平線近くには雲がかかっていたが、切れ間から赤い太陽が顔を出し、釧路川の水面には緋色の光の道ができた。日没地点と川の流れがちょうど同じ方向になるところがみそ。世界三大夕日の残り二つは、インドネシア・バリ島と、フィリピン・マニラとか。


両岸には夜の漁に備えるサンマ漁船が接岸。この日は大型客船も停泊中で、時折「ボーッ」という汽笛を鳴らし、港町の雰囲気を盛り上げた。橋の上は内外の観光客でなかなかのにぎわい。恋人と二人で見る夕日とはいかなかったが、十分ロマンティックな気持ちにしてくれました。
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2017年10月16日

わたしを離さないで

ノーベル文学賞作家カズオ・イシグロの代表作「Never Let Me Go」。長崎がルーツとはいえ、英語で書かれた作品、翻訳がどうかなと危惧して読んだが、杞憂だった。どこかの新聞報道ではSFにジャンル分けされていたが、あくまで設定、枠組みがそうであるだけ。深い哀しみ、人生、運命というものについての重い思索を呼び起こしてくれる作品だ。


昨年あたりに綾瀬はるかの主演でテレビドラマになったらしいが、まったく関心のらち外だった。何の先入観もなく読んだのはよかった。英国の作家といえば、シェイクスピアやジェフリー・アーチャーなどが思い浮かぶが、やはり宗教的背景や文化の違いを理解していないと、分かりづらい表現にたびたびぶつかる。しかし、このイシグロ作品にはそうした障害がない。非英語圏の人にも十分理解でき、訴えるべき内容を含んでいる。「世界文学」といわれる所以であろう。


日本人として生まれたイシグロは、英国籍を取得したとはいえ、あくまでマイノリティであり、作品にも人種差別に通じる排他的感情が描かれる。クローンをはじめとする先進科学への懐疑、神と人間というテーマも包含している。読む人によって様々な解釈ができるし、自分の問題として捉えることができる。懐の深い文学作品だと思った。



わたしを離さないで (ハヤカワepi文庫)

わたしを離さないで (ハヤカワepi文庫)



  • 作者: カズオ・イシグロ

  • 出版社/メーカー: 早川書房

  • 発売日: 2008/08/22

  • メディア: 文庫





posted by あぶりん at 21:31| Comment(0) | 読書日記 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2017年10月09日

日本民藝館

駒場の日本民藝館を訪ねた。日本近代文学館に行ったのをSNSにあげたら、近くにある日本民藝館もいいよ、と友人が教えてくれた。


パンフレットによると、「民藝」という新しい美の概念の普及と「美の生活化」を目指す「民藝運動」の拠点として、思想家の柳宗悦(やなぎ・むねよし)が企画。建物も柳が設計したという。

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日本人が愛した英国の椅子、ウィンザーチェアの展覧会をやっていたが、ゴッホが使った椅子がしれっと展示されていたりした。館の方針で、説明書きは極力少なくしているそうで、それは「知識で物を見るのではなく、直感の力で見ることが何より肝要である」という柳の見識によるという。確かにその通りだと思う。

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館内には生活の臭いともいうべきものが感じられた。どちらかというと無機質なビル街の美術館とは違い、日用品にしみついた手垢やカビの臭いかもしれない。それが芸術品とは異なる、日用の美なのだろう。

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ラベル:民藝運動 柳宗悦
posted by あぶりん at 12:04| Comment(0) | アート | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする