2017年08月27日

顔に降りかかる雨

桐野夏生さんのデビュー作で、江戸川乱歩賞の受賞作。女性探偵、村野ミロシリーズの第1弾ということで、期待して読んでみた。


でも、まあデビュー作というのは、こんなものなのかなあというのが読後感。不明の親友を捜すミロと相棒の男がいい感じになって、男女の関係になりそうなくだりの唐突感。最後の謎解き場面の冗漫なモノローグなど、未熟な書きぶりが気になった。


女のもろさ、しなやかさを書かせたら、当代随一の桐野さんとはいえ、デビュー時はまだ甘かったんだなあ。講談社文庫の新装版、表紙の女性のイラストに惹かれたが、「ジャケ買い」はするものではない、と反省。



新装版 顔に降りかかる雨 (講談社文庫)

新装版 顔に降りかかる雨 (講談社文庫)



  • 作者: 桐野 夏生

  • 出版社/メーカー: 講談社

  • 発売日: 2017/06/15

  • メディア: 文庫





posted by あぶりん at 17:02| Comment(0) | 読書日記 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

奇跡の星の植物館

初めて淡路島に行った。新幹線新神戸駅からクルマで明石海峡大橋を渡り、40分ほどでホテルに着いた。神戸市街からこんなに近いとは。完全に通勤圏内だ。

IMG_1083.JPG

淡路夢舞台にある「奇跡の星の植物館」へ。名前がいいよね。大規模な温室に熱帯の珍しい植物がきれいな花をつけている。植物園というよりガーデニング感覚のフラワーアレンジが魅力。送風機をフル稼働していたが、さすがに真夏はさわやかではない。

IMG_1091.JPG

一帯は建築家安藤忠雄さんの設計によって国際会議場やホテル、百段園というステップガーデン、野外劇場などが整備されている。どれも個性的なデザインで、「海の教会」は光の十字架が素敵。こんなところでウエディングを挙げたら、きっと幸せな新婚生活が送れるかもね。

IMG_1095.JPG

地元の人のおすすめで、北淡震災記念公園にも行ってきた。阪神淡路大震災のときに現出した「野島断層」が保存されている。天然記念物の断層をすっぽり屋内に保存している。地面のズレ、段差をそのまま見ることができる。すぐ側にあった民家は倒壊せずに今も残っていて、ほんのわずかな位置関係が生死の境を分けたことを物語る。模擬装置で強震度の揺れを実体験し、あらためて地震の恐ろしさを噛みしめた。

IMG_1101.JPG

野島断層保存館


IMG_1107.JPG

活断層がずれて大地震が起きた
posted by あぶりん at 16:46| Comment(0) | 雑感 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2017年08月26日

業音

作・演出松尾スズキ。大人計画の「日本総合悲劇協会」ユニットによる「業音」を東京芸術劇場シアターイーストでみた。NHKの時代劇「ちかえもん」や、エッセーでファンになった松尾スズキ。一度舞台を見たかったのが、ようやく実現した。

IMG_1116.JPG

15年前に荻野目慶子ヒロインで初演した話題作。9・11同時テロや高齢者問題、サラ金など、当時の時代背景を感じさせるが、内容は悲劇的場面に人間のおかしさを見出し、その「業」を描く。松尾スズキの頭の中をそのまま舞台にしたのではないか。先月まで新聞連載していたエッセーを思い出した。やたら「×んこ」という言葉がセリフに出てくるし、お尻丸出しの場面も出てくる。


でもそれが下品ではなく、必然性があるのが不思議。踊り子が舞う場面転換はなかなかしゃれているし、セットと合わせ松尾スズキの美学のようなものが感じられた。

IMG_1117.JPG

主演の演歌歌手役の平岩紙はさすがの熱演。宮崎吐夢、皆川猿時も当然ながら存在感があった。
posted by あぶりん at 21:02| Comment(0) | シネマ&演劇 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2017年08月20日

ベイビー・ドライバー

エドガー・ライト監督。アンセル・エルゴート主演。銀行強盗一味の逃走ドライバー役である「ベイビー」。ipodで音楽を聴きながら超絶ドライビングを披露する。ミュージックとクルマと恋。今も昔もアメリカを象徴するようなシネマだ。


映画の間常にかかっている音楽は、主人公のベイビーの耳できこえる音という設定。片方のイヤホンを外すと音量が落ち、事故いらい悩まされている耳鳴りも時に聞こえる。まるで自らが主人公になったように、物語に没入してしまうという仕掛け。


恋人デボラ(リリー・ジェームズ)と二人での国境を目指す逃避行は、「俺たちに明日はない」のボニー&クライドを彷彿させる。ストーリーの中で大きな役割を果たすカセットテープがとても懐かしい。アナログな温かさが、愛する母と良心の呵責という作品のテーマとマッチしている。





Baby Driver

Baby Driver

  • 作者:
  • 出版社/メーカー:
  • メディア: Blu-ray



「最前線の映画」を読む(インターナショナル新書) (集英社インターナショナル)

「最前線の映画」を読む(インターナショナル新書) (集英社インターナショナル)

  • 出版社/メーカー: 集英社
  • 発売日: 2018/02/12
  • メディア: Kindle版
posted by あぶりん at 15:41| Comment(0) | シネマ&演劇 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2017年08月19日

任侠外伝 玄界灘

東京国立近代美術館フィルムセンターの特集「逝ける映画人を偲んで2015-2016」で。1976年、唐十郎の初監督作品。芝居でしか見たことのない唐十郎の世界がどんな風に映画で描かれるのか、興味津々で見た。


状況劇場の看板だった根津甚八、唐さんの妻だった李礼仙。当たり前だが若くて、生き生きしている。釜山と下関が舞台で、朝鮮戦争の影と、海峡をはさんだ日韓の人とカネの行き来を背景に親子、男女の愛を描く。イメージの連鎖が特色の舞台とは違い、ある程度のストーリーは追えた。


舞台ではおなじみの怪しいキャラが銀幕でも随所に出てくる。暴力やエログロは、何かと規制の多い今よりも過激で、時代を反映してストリップ小屋のシーンも。何か面白いことをやってやろうという意欲が随所に見て取れる。


安藤昇、宍戸錠、常田富士男、小松方正ら懐かしい顔。若き日の石橋蓮司、小林薫がいた。嵐山光三郎もいた。もちろん唐さんもちょい役で出ていた。どぶ川(鶴見川らしい)に棄てられた李を抱擁する根津、それがラストシーン。ヘドロの中でのラストも70年代らしい。花園神社や鬼子母神の紅テント舞台だとどんな演出になるのか、想像しながらスクリーンを見た。


任侠外伝 玄海灘(新・死ぬまでにこれは観ろ! ) [DVD]

任侠外伝 玄海灘(新・死ぬまでにこれは観ろ! ) [DVD]



  • 出版社/メーカー: キングレコード

  • メディア: DVD





posted by あぶりん at 21:37| Comment(0) | シネマ&演劇 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする