2017年06月30日
ベター・ハーフ
2017年06月25日
血花血縄
2017年06月18日
腰巻おぼろ 妖鯨篇
新宿梁山泊の創立30周年記念公演第2弾「腰巻おぼろ 妖鯨篇」を新宿・花園神社で観た。唐十郎が1975年、上野不忍池の紅テントで演じて以来、42年ぶりの再演。分厚い台本でふつうに演じると4時間超になるのを、演出の金守珍がぎゅっと圧縮して3幕にしたという。それでも公演は10分休憩2回をはさみ約3時間、靖国通りの喧噪が時折聞こえてくる紫テントの中で、濃密な情念の世界が繰り広げられた。
赤い腰巻のおぼろ・水嶋カンナ、ガマという名の少年・申大樹、千里眼の大鶴義丹、サメ肌の大久保鷹。異様で滑稽で、どこか哀しい人物たちが次々と登場する。今回は大時代なタンスが、場面転換のどこでもドア。星座、星占い、捕鯨船、ピノキオ、株式市場と、イメージの連鎖は続く。
初演で千里眼を演じたのはもちろん唐十郎。長男の大鶴が今回、同じ役を演じ、「現代の歌舞伎のような」一子相伝の芸となった、とは終演後の金のあいさつの弁。宇野亞喜良の美術は相変わらず作品世界にぴったり、むしろ美術からイメージが喚起されているともいえる。
2017年06月15日
美しい星
読んでから見るか、見てから読むか。このほど映画化された三島由紀夫の「美しい星」はまず読んでから見ることにした。
平凡な家族がある日突然、宇宙人であることを自覚する。あの三島が昭和30年代にこんなSF作品を残していたことに驚いた。当時、世界的話題になった空飛ぶ円盤、マンテル大尉事件や米国・ソ連の核実験など、実際のニュース・世相にビビットに反応している。宇宙人や円盤(UFO)は当時、いかがわしいものとの見方がある一方で、わが国最初の全国的UFO研究団体「日本空飛ぶ円盤協会」が設立され、三島はじめ石原慎太郎や星新一、糸川英夫ら著名文化人が会員として名を連ねている。そうした時代背景を考えれば、時代の先端をいく三島が、宇宙人やUFOをテーマに小説を書いたとしても不思議はない。実際、その文明批判、深い味わいは、現代作家に例えれば筒井康隆の作品のようだ。
思想小説ともいわれる作品には、人類の未来について、多くの警句的文言がちりばめられている。「来るべき核戦争は集団の憎悪によって起こるよりは、そんなものと関係のない個人の気まぐれな錯乱や不幸な偶然から起こるだろう」「地球なる一惑星に住める人間なる一種族ここに眠る。彼らはなかなか芸術家であった。彼らは喜悦と悲嘆に同じ象徴を用いた。彼らは他の自由を剥奪して、それによって辛うじて自分の自由を相対的に確認した。彼らは時間を征服しえず、その代わりにせめて時間に不忠実であろうと試みた。そして時には、彼らは虚無をしばらく自分の息で吹き飛ばす術を知っていた」
試写を見た同僚によると、映画はわかりにくかったとか。「読んでから見る」のが正解かも。