2017年04月28日

紙芝居 アメ横のドロップ売り

東中野の芝居砦・満天星にて新宿梁山泊の創立30周年記念公演第1弾をみる。唐十郎さんの書き下ろし作品を金守珍さんが演出。


大阪を中心にかつて人気だった山口正太郎氏作・画の紙芝居「おおかみ王女」を題材に唐さんの母親のことを書いたといわれる作品。舞台は戦後間もないアメ横で、紙芝居の手伝いをしている女と、復員兵の出会いから物語が展開する。鴻上尚史によると、唐芝居は要約が不可能で起承転結というより、イメージの連鎖で紡がれていく物語。


この作品も劇中歌にイメージを膨らませながら、昭和のロマンにどっぷりと浸かる、楽しいひとときを味わえた。あえて作品に意味を持たせるとすれば、人が物語をつくり語る自由の大切さを訴えていると言えるのではないか。金さんの演出で、唐芝居の読み解き方が少し分かった気がする。



状況劇場 劇中歌集

状況劇場 劇中歌集



  • アーティスト:

  • 出版社/メーカー: SUPER FUJI DISCS

  • 発売日: 2011/10/05

  • メディア: CD










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2017年04月25日

笑う101歳×2 笹本恒子 むのたけじ

試写会で鑑賞したドキュメンタリー。日本初の女性写真家と伝説のジャーナリストの生き方を元NHKの河邑厚徳監督が撮った。


昨夏亡くなった、むのたけじさんは、元朝日の記者。敗戦で社をやめて故郷・秋田県横手に帰り、週刊新聞「たいまつ」を発行した。二度と戦争を繰り返してはいけない。そのメッセージを伝えることを自らの使命として、書き、話し続けた。2015年、集団的自衛権を認める安保関連法案の国会審議のとき、若い人たちがデモなどで反対を叫んで立ち上がった。「この70年間戦争をしなかった日本だから、こうした若者が育ったのだ」と話した。


笹本恒子さんは、徳富蘇峰や加藤シヅエ、浅沼稲次郎、力道山ら昭和の有名人にカメラに納め続け、なお現役。代表作「明治生まれの女性たち」シリーズは、女性の地位向上に大いに貢献したという。


しかし101歳になっても、実に覇気があるし、笑顔なのがいい。人生はもちろん山あり谷ありで、二人とも家庭的、健康的に辛い思いをしたことも数知れなくあったらしい。それでも自分のやりたいことを死ぬまでやり続けるという決意が二人にはあった。むのさんは入院中でも「微笑みながら死にたい」と言い、死ぬときの練習をしていたというエピソードもある。それはきっと残された人への心遣いでもあったのだろう。


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2017年04月23日

ジムノペディに乱れる

日活のロマンポルノ・リブート・プロジェクトで、丸の内日活が1日限り復活した。新シリーズ5作品一挙上映というので観に行ってみた。総尺80分程度、10分に1回の濡れ場、制作費は全作品一律で撮影期間は1週間。完全オリジナルで、ロマンポルノ初監督という条件で、5人の著名監督がチャレンジした。


驚いたのは結構、女性客が多いこと。行定勲監督はラブストーリーの名手といわれているだけあって、エリック・サティの名曲にのせて、いろんなシチュエーションでの愛の場面を美しく官能的に撮っている。そんなところに女性ファンは惹かれるのかも。板尾創路演じる映画監督が自分の撮りたい映画を撮れない鬱屈を女性たちにぶつける様は、創作活動に携わる人たちが必ずぶち当たるカベのようなものだろうと納得できた。


女優は、芦那すみれの透明感、岡村いずみのコケティッシュな魅力がなかなかよかった。AV時代のロマンポルノは、わいせつ性ではなく、文学性で話題になるようなレベルの作品群がとりあえずそろったと感じた。


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2017年04月22日

城塞

新国立劇場の「かさなる視点-日本戯曲の力」シリーズ。安部公房作。満州からの引き揚げ体験がある氏が昭和30年代に書いた戦後を見つめる作品。あの名作「砂の女」を同じ年に発表していると聞き、劇中に出てくるストリッパーの女が砂の女のイメージと重なった。


劇中劇で、主人公の男の父は戦争成金という設定。今でいうPTSDか、引き揚げ体験がトラウマとなり、気が狂い、酒を飲んだときだけ、まともな会話ができる。ただ内容はいつも引き揚げ時の話。高度成長のまっただ中、だれもが戦争のことは忘れて、カネもうけに夢中になっている。でもよく考えると、それは戦争の犠牲者の上に成り立っているのではないか。


かつてノーベル文学賞に一番近い日本人作家といわれた安部公房の視点は、まったく古びていない。饒舌すぎない、しっかりとした台詞。革新的な手法は、永遠の前衛といえる。上村聡史演出。山西惇、たかお鷹、辻萬長、松岡依都美、椿真由美。


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2017年04月19日

ライアー

大沢在昌さんのアクション・ハードボイルド。美しき妻であり母親が冷徹な暗殺者として、悲しき真実に迫る。

かつて新宿鮫シリーズにはまったが、今回は女性が主人公とあって少し趣が違った。それにしても大沢さんの銃器の知識の豊富さには驚かされる。ガンマニアとして、東南アジアなどで実際に射撃したりして、長年取材してきたと、聞いたことがある。グロック36だの、コルトM1911だの、読む方ももう少し銃の知識があれば、もっと物語を楽しめたかも。屋内射撃場には、強力な換気扇が不可欠で、それは銃を発射すると、有害な火薬の燃焼ガスと、銃弾の鉛の破片とガンオイルが放出されるからという。

オッカムの剃刀という言葉を知った。複雑な理由をつけようとしても、物事はほとんど単純な理屈で動いているといった意味らしい。

ライアー (新潮文庫)

ライアー (新潮文庫)

  • 作者: 大沢 在昌
  • 出版社/メーカー: 新潮社
  • 発売日: 2017/03/01
  • メディア: 文庫


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