芸術活動の集大成ともいえる展覧会を国立新美術館に見に行った。絵画シリーズ永遠の魂は、130点を一堂に展示。代表的なドット柄、アメーバのようにうごめく形、泣いている顔。色とりどりの、抽象・具象に圧倒される。「すごい」という形容詞しか、浮かんでこない。私が死んでもこの芸術作品を永遠に遺し、引き継いでほしい。平和な世界を願う、私の魂を語り継いでほしい。ことし88歳。いずれ来る天寿を見据えて、遺言のようなメッセージを掲げていたのがとても印象に残った。若いころに書いたという文学作品なども読んでみたい。
2017年02月26日
2017年02月19日
漂砂のうたう
木内昇(のぼり)さんの直木賞受賞作。明治10年、東京の根津遊郭が舞台だ。明治維新から取り残された武家の男が、遊郭の客引きとして働きながら、自分の生き方を模索する。西郷が決起し西南戦争が勃発するなど、武士の不満が世の中に渦巻いていた時代。多くの名も無き人たちが、同じような鬱屈を抱えて生きたのであろうと思った。花魁や落語家、常磐津の師匠と、江戸情緒を醸し出す登場人物たち。神田川沿いや浅草、柳橋あたりの地名も身近な散歩コースで、ぶらタモリのような気持ちで往時の情景を想像しながら、楽しめる作品だった。時代小説の新たな才能を発見した。
ラベル:木内昇