2025年03月24日

隣の国の人々と出会う 韓国語と日本語のあいだ

韓国語の翻訳家・斎藤真理子さんの語学エッセイ「隣の国の人々と出会う 韓国語と日本語のあいだ」(創元社)を読む。マル(言葉)、クル(文、文字)、ソリ(声)、シ(詩)、サイ(あいだ)という5つの言葉から、韓国語と日本語の違いやハングルに宿る思想や歴史を語る。韓国語使いではないが、初めて知ることも多く、勉強になった。韓国語を学ぶ家族にも勧めようと思う。

ハングルは「ハン」(偉大な)「クル」(文字)。世宗(セジョン)大王がチームを編成し作り出したハングル。自然と出来た言葉ではないところが凄いと改めて思う。他国に支配された史実から自国の歴史への思いは強い。「6・25」(ヨギボ)の時と、朝鮮戦争が始まった日付が普通の会話に出てくる。

韓国では詩人のステータスが高いのも日本とは異なる。啓蒙者であり、抵抗者であり、精神的な支柱だった。金芝河、李箱(イサン)、尹東柱ら、名前だけは知っているが、深く作品を読んだことがない。神風特攻隊のことを「生きられない飛行機」と表現する感性はやはり詩的な国民なのだと感じた。

隣の国の人々と出会う: 韓国語と日本語のあいだ シリーズ「あいだで考える」 - 斎藤真理子
隣の国の人々と出会う: 韓国語と日本語のあいだ シリーズ「あいだで考える」 - 斎藤真理子
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2025年03月23日

侍タイムスリッパー

安田淳一監督・脚本の「侍タイムスリッパー」をAmazonで見る。タイムスリップという言葉にもっとSFチックな展開を予想していたが、気合いの入ったチャンバラ活劇になっていた。時代劇への愛情が感じられる、楽しい映画だった。

自主映画を作り続けて3作目という未来映画社。安田監督は京都の農家で米作りもしているらしい。脚本はもちろん照明、編集と何でもこなす映画人。乏しい資金ながら東映京都撮影所を使わせてもらい、なんとかかんとか撮影にこぎつけたという。

主演の山口馬木也は風貌といい所作といい、田舎侍がピタリとハマっていた。敵役の冨木ノリマサ、助監督役の紗倉ゆうのも、いい味出してた。Amazonプライムなら無料ということで、劇場に行く手間が省けたと思っていたが、クライマックスの殺陣はやはり銀幕で見るべきだと思った。

侍タイムスリッパー - 安田淳一, 安田淳一, 安田淳一, 山口馬木也, 冨家ノリマサ, 沙倉ゆうの, 峰 蘭太郎, 庄野﨑謙, 紅 萬子
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2025年03月22日

ひろしま美術館

広島市のひろしま美術館で「オディロン・ルドン 光の夢、影の輝き」を鑑賞した。19世紀後半から20世紀初めに活躍したフランスの画家。平和資料館、原爆ドームと巡った後に入った美術館で、平和な日常の幸せを噛みしめた。

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異様なモノクロの木炭画からパステル、油彩と色鮮やかな絵に移る。作品の変遷を眺めながら一人の画家の心理の移ろいを想像する。「ポール・ゴビヤールの肖像」と「眼をとじて」。2枚の絵はがきを買う。

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美術館は円筒の形をした常設展示場の周りを特別展の会場が取り囲むようにある。受付から中庭に入り彫刻のあるエントランスを歩き、会場に進む。日常を抜け出しアート空間に身を浸す心地よさ。カフェでコーヒーとクッキーで余韻を楽しんだ。

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2025年03月21日

戦後80年の広島平和資料館

広島市の平和公園にある平和資料館を訪ねた。戦後80年の節目に戦争の愚かさと悲惨な被害の実態を目に焼き付けた。ノーベル平和賞を受けて以来、インバウンドの来館者が増え、結構な行列だと聞いたので、事前にWEB予約して、比較的空いている朝8時半から見学した。

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1945年8月6日8時15分、広島上空で原爆が炸裂した様子を模型パノラマで再現する。そこから被害の実相を証言する展示が続く。これまで新聞や本やテレビなどで何度も見てきたが、実物を見ると改めてその非人道的な兵器の恐ろしさを実感する。折り鶴の佐々木禎子さんはじめ犠牲になった人たちの言葉とその日の行動などを見ると、胸が詰まってただ沈黙するしかなかった。

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最後のコーナーに原爆投下までの米軍の準備計画や、広島での核廃絶を訴える活動のパネル展示などがあった。広島、長崎のほかに原爆投下の候補地になっていた中には北九州市の小倉もあった。天候の関係で投下先が変わり、多くの人の運命も変えた。核兵器の脅威は決して人ごとではないと改めて肝に銘じた。

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2025年03月18日

遊郭と日本人

田中優子さんの「遊郭と日本人」(講談社現代新書)を読了。NHK大河ドラマ「べらぼう」の舞台・吉原のことを知りたくて書棚から手に取る。日本の伝統文化を体得した花魁が活躍した場所。ドラマの映像を思い浮かべながら読むと、理解が深まった。

遊女は、高い教養を持ち、香木を焚き染めとても良い香りを放った。和歌をつくり三味線を弾き、生花や抹茶の作法を知っていて、年中行事もしっかり行なっていたという。とはいえ、前借金のかたにいわば自由を奪われ(勝手に遊郭の外に出られず)、身請けされない限り、金を返すまで多くの男と夜を共にしなければならなかった。人権無視の公娼制度だ。

床上手は、遊女の大事な要素。井原西鶴「好色一代男」「諸艶大鑑」によると、「肌が麗しく暖かく、その最中は鼻息高く目は青みがかり、脇の下は汗ばみ、腰が畳を離れて宙に浮き、足の指はかがみ、それが決してわざとらしくない。たびたび声を上げながら、男が達しようとするところを9度も押さえつけ、どんな精力強靭な男でも乱れに乱れてしまう。その後で灯をともして見る美しさ、別れる時に「さらばや」と言うその落ち着いたやさしい声」が床上手の意味という。江戸文化の粋がつまった一冊。

遊廓と日本人 (講談社現代新書) - 田中優子
遊廓と日本人 (講談社現代新書) - 田中優子
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