頭に残ったのは「人里」という言葉。日本ホタルの会の活動として、人里をつくることを目指した。人里とは、人間が人間の論理で生活し、いろいろ活動しているが、決して自然の論理を潰しきってしまわずに、自然の論理と人間の論理が絶えずせめぎ合っているような場所。ホタルはそんな人里の象徴であって、ホタルが大切なのではない。いろんな生き物がそれぞれの論理で極めて利己的に生きており、それが「共生」だという。人と自然との調和なんて言うが、そもそもそれぞれのロジックのままにすること、無理に調和を作り出さないことが大事だという。
ツバメはスズメを避けるため人家の軒下に巣を作る。人通りの多いところの方がスズメは寄ってこない。ツバメが巣を作る家が繁盛するのではなく、繁盛して人が行き来するところにツバメが営巣するのだと知る。多くの動物は人が思っている以上にしたたかなのだ。カマキリの卵の積雪予知能力にも興味深い研究として触れていたが、これは近年、否定する論文が出ている。科学エッセイを読むときは最新の学説にも注意しないといけないと思った。

春の数えかた (新潮文庫) - 敏隆, 日高
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